乳幼児期は基礎工事のときであり、その後の時期は、外装や内装工事、あるいはカーペットや家具のようなものです。後からやるものほど、やり直しがききます。「A大学を卒業した」「B大学に留学した」などというのは、ペルシャのじゅうたんや、スウェーデンの家具みたいなものであり、そんなものはいつでも取り替えが可能です。
建物が出来上がった後に基礎工事に関心をもって床をめくってみようという人はいませんが、何かあったときに基礎工事がどれだけ建物の命運を決するかは周知のことです。建物であれば、再構築も可能ですが、人間はそうはいきません。歳をとってからでも高校や大学の学生になることはできますが、10歳とか30歳になってから保育園や幼稚園に入ることは絶対にできません。そこに勤めることはできても、園児になることは二度とできないのです。
児童精神科医・佐々木正美先生の言葉です(『子どもへのまなざし』)。読むたびに、ハッとさせられます。
「園児になることは二度とできない」のですから、それだけかけがえのない<いま>を子どもたちは過ごしているのです。
実は、前々任の小平善行牧師からもよく似た言葉を伺ったことがあります。「(保育者の)皆さんは、大学教授なんかよりずっと大切な働きをしているんですよ」と。
決して大学教育を否定するわけではありませんが、日本社会では「幼保こ<小<中<高<大」と価値付けられてしまっていることを感じます。けれども、今回の保護者面談を通して、取替不可能な<いま>を皆さんが大切にしている姿に出会い、嬉しくなり、また励まされました。
子どもたちの<いま>を、いっぱいの愛であふれたものとなれるように努めていきたいと願っています。