『苦海浄土』

『苦海浄土』(著・石牟礼道子)を読みました。

水俣病と向き合ったこの本の存在は、かなり前から知っていたにも関わらず、手に取ることはありませんでした。担いきれないような問いかけに出会うことを、どこか避けていたのです。しかし、礼拝にも数回出席されたSさんから、ぜひ読むように薦められ、また石牟礼道子さんが2月に亡くなられたことも相まって、新装版の文庫を購入しました。

とても驚きました。今まで読んだことのあるどんな作品とも違ったものでした。ルポタージュのようなものを予想していたのですが、実際はとても文学的・詩的で、その独特の表現一つ一つが光を放っていました。水俣病を様々角度で描いているのですが、それはもう魂にまで掘り下げていました。胎児性水俣病の杢太郎くんと暮らすおじいさんの場面にもそれが見られます。

あねさん、この杢のやつこそ仏さんでござす。こやつは家族のもんに、いっぺんも逆らうちゅうこつがなか。口もひとくちもきけん、めしも自分で食やならん、便所もゆきゃならん。それでも目はみえ、耳は人一倍ほげて、魂は底の知れんごて深うござす。一ぺんくらい、わしどもに逆らうたり、いやちゅうたり、ひねくれたりしてよかそうなもんじゃが、ただただ、家のもんに心配かけんごと気い使うて、仏さんのごて笑うとりますがな。それじゃなからんば、いかにも悲しかよな眸ば青々させて、わしどもにゃみえんところば、ひとりでいつまでも見入っとる。

まだお読みでない方は、ぜひ手にとって読んでみることをお薦めします。

(有明海のほとり便り no.84)

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